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龍虎探偵1

龍美と虎子、シティでは少しばかり名の売れた探偵だ。
暫く前にあった麻薬密売組織壊滅の影の立役者として、その筋では名前が通っているのだ。
あまり一般的に知れているわけではないが、それでも力量のある探偵としてはそれなりの知名度を持っていた。
しかし、そんな二人の裏の顔を知るものは少ない。
裏なのだから当たり前ではあるが。

「ドラゴン、やるわよ!!」

「任せて、タイガー!!」

青と白、二つの色が風となって駆け抜ける。
獰猛な突風のように牙を向くその風は、そこに集まっていた人外の者共を蹴散らした。
俗に戦闘員と呼ばれる、個性のない奇妙な集団。
数十人はいたそれらを、2つの風は一気に吹き飛ばしたのだ。
すべてをなぎ払った風は動きを止めて、たったひとつ残った者に向き直る。

「そ、そんな。薬物強化戦闘員が一瞬で!?」

狼狽するその男。
いや、声からして男ではあるのだろうが、試験管やフラスコ、注射器などの医療器具や実験器具で創り上げられた体を持つ怪人、ドクターメディマッドに2つの風は指を突きつけた。

「禁じられた薬物を用いて人体実験を繰り返していた犯人、ドクターメディマッド!!」

「貴様の悪行は全て暴いた。死をもって、己の悪行を償え!!」

そして2つは混ざり合うように一つの光となって、ドクターメディマッドの体を貫いたのだった。
体を貫かれた怪人は、がくりと膝をつき、声を上げた。

「狂畜党に、栄光あれぇぇぇぇ!!」

その断末魔の声と共に、大きな音を伴って爆発。
怪人は欠片も残さずにきえてしまった。
その爆発を背に、二人は勝利のポーズをとる。
彼女たちこそシティに跋扈する悪を駆逐する正義のヒーローたちの一員。
パンチドラゴンと、キックタイガー。
そしてそれが、龍美と虎子の裏の顔の名前でもあった。
探偵業の傍ら裏世界で暗躍する悪をくじく正義の使者でもあったのだ。



「あの、お帰りなさい」

変身を解いて探偵事務所へ戻った二人を迎えたのは、そんな可愛らしい声だ。
まだ少年と言っても過言ではない幼さを残した容貌の可愛らしい子供が一人、事務所で待っていたのだ。

「うんうん、大丈夫大丈夫、こーた君こそお留守番大丈夫だった?」

少年を抱きしめながら、金髪の女性はそう答える。
その豊満な胸元に押し付けられた少年は、顔を真赤にして目を丸くしていた。
どこか容器で妖艶な雰囲気を漂わせる彼女こそ、西園寺・エイラ・龍美、正義の使者パンチドラゴンにしてこの探偵事務所の片割れ。

「やめなさい龍美。馬鹿が伝染るわ。こうた君はあんたと違ってお留守番くらいしっかりとやってのけるわよ」

その腕からひったくるように少年を奪い取った見惚れるほど艶やかな黒髪をした女性が、一条寺虎子、つまりはキックタイガーだ。
皮肉気味に奪い取った彼女も、やることは龍美と変わらず薄い胸で抱きしめることである。
少年は結局、あいも変わらず顔を真赤にしておろおろするしかないのだった。

「でも、ごめんねこうた君。今日も、あなたのお母さんを見つけることは出来なかったわ」

そんな幼く可愛らしい少年こそ、彼女たちの今の依頼人、つまりは雇い主だ。
彼の願い、悪の秘密結社狂畜党にさらわれた母親を見つけ出すために、彼女たちはシティにはびこる悪の組織の一つである狂畜党と日夜戦っているのだ。
未だ助けられてはいないが、二人はこれまでの調査、戦いで確かな手応えを感じていた。

「次は、もっと深く踏み込んでみるつもり。私たちは大丈夫だから、安心して待っていてね」

二人のその言葉に、こうたは小さく頷いたのだった。



「今日もまたやられたそうじゃないか」

暗いどこかで声が響く。
赤い小さな点がいくつも点滅しているが、その暗さは人には何も教えようとしない。

「もとよりマッドネス怪人では戦って奴らに勝てぬことなどわかりきっていることだろう」

「ふん、怪人をいったい失っておいて偉そうなことを。何か策があるのか?」

「でなければこのようなところまで奴らに入られるものかよ」

「ふぅん、自信ありげだ」

「当たり前だ。既に情報は掴ませてあるし、奴らの情報も掴んでいる。次こそは必ず、タイガーアンドドラゴンを我が手におさめてくれる」

「そうかい。まあ結局、私としても面白ければなんだっていいのだけどね」

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